大腸

大腸がん

大腸がんとは

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。

大腸の粘膜に発生した大腸がんは次第に大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔内に散らばる腹膜播種を起こします。また、大腸の壁の中を流れるリンパ液に乗ってリンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。

大腸がんの死亡数は食の欧米化の影響か増加傾向にあり、今後も増加すると予想されています。

しかし、早期に発見して治療すればほぼ治癒が可能ながんです。

大腸がんの罹患数

2020年のデータでは、大腸がんになった人は、男性は8万2809人で2位、女性は6万4915人で2位です。総数では1位になります。

※上皮内がんを除く
※総数は男女および性別不詳の合計

男性はおよそ10人に1人、女性はおよそ12人に1人が、一生のうちに大腸がんと診断されています。

厚生労働省のデータによると、2020年にがんで死亡した人は37万8385人。男性の大腸がんでの死亡順位は第3位ですが、女性は1位となっています。  日本では今、年間5万人以上が大腸がんで亡くなっていて、この20年くらいの間に罹患率も死亡率も、世界のトップを走るようになってきました。アジアの中でもダントツに高いという状況です。

自覚症状、大腸がんを疑う症状

●便に血や粘液が混じったり、 下血したりする(痔と自己判断しないこと)
●下痢と便秘を繰り返す(便通異常)
●残便感がある
●腹部に膨満感がある
●腹痛がある
●肛門痛がある
●腹部にしこりがある
●腹鳴(おなかがゴロゴロ鳴ること)がある
●便が細くなった
●貧血症状が続く
●治りにくい痔がある

次のような人も検診を受けることをお勧めします。

●10年以上、潰瘍性大腸炎にかかっている
●家族の中に大腸がんにかかった人がいる
●大腸ポリープが見つかったことがある

大腸がんそのものではお腹の痛みや違和感が出現するはありません。がんが進行して大きくなると腫瘍が便の流れを妨げたり、腫瘍から出血を起こすことで症状として自覚されるようになります。早期の大腸がんは無症状のことが多いです。

検査による発見

大腸がん検査

大腸がんを疑う症状

  ↓

精密検査:大腸内視鏡、注腸造影検査

  ↓

確定診断:病理検査

  ↓

転移の有無などを調べる検査:全身のCT検査、骨盤のMRI検査、腹部超音波検査、PET検査など

便潜血検査

自覚症状のない大腸がんを見つけるため、日本では40歳以上を対象に便潜血検査による対策型検診が市区町村単位で実施されています。便潜血検査は腫瘍からの微小な出血を検出する検査であり、2日間に分けて便の採取を行います。検査結果が「要精密検査」となった方は大腸内視鏡検査で精査を行う必要があります。また、1回の検診ではがんが見つからないこともありますので毎年検診を受けることをお勧めします。

注腸検査

肛門から細い管を挿入して造影剤(バリウム)と空気を入れて、大腸内をX線で撮影します。大腸の壁にできた病変やがんの位置、大きさ、形などを判断するのに適しています。

大腸内視鏡検査

内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく観察し、病変があればその一部または病変全体を採取して病理検査(顕微鏡で組織を詳しく調べる検査)をします。

病理検査

内視鏡で採取した組織を薄切し、プレパラートに乗せて顕微鏡で観察をします。この検査でがんかどうかの診断をつけます(確定診断)。内視鏡でがんを切除した場合は病理検査で「がんが取り切れているか」「がんの深達度(深さ)はどうか」「がんが静脈やリンパ管に浸潤していないか」「がん組織の種類」などを明らかにし、追加で外科治療が必要かどうかを判断します。

CT(Computed Tomography)検査

X線を使い全身の断面を撮影する検査です。造影剤を撮影前に静脈注射することでより診断精度が上がるため、腎臓の機能に問題なく、造影剤に対するアレルギーがない方には造影剤を用いた撮影を行います。一般的には胸部~骨盤まで体幹の撮影を行い、腫瘍の局在やリンパ節転移、遠隔臓器への転移の状態を評価します。大腸がんの場合、通常のCTでは腫瘍が大きくないと指摘が難しいことがあり、大腸の状態をより詳しく評価するCTC(CT Colonography)検査をお勧めすることもあります。

CTC(CT Colonography)検査

下剤を服用して前処置をした後、肛門からCTC専用の炭酸ガスをゆっくり注入し、大腸を膨らませた状態でCTを撮影します。炭酸ガスは腸管から速やかに吸収されますので腹満感もすぐに改善します。通常のCTと比較し大腸の内側(粘膜面)の病変まで精密に調べられ、大腸の病気の発見から転移の診断まで行うことができます。大腸内視鏡検査が受けれない方にも受けていただけますが、大腸に腫瘍が見つかった場合は、病理検査で確定診断をつける必要があるため後日内視鏡検査を受けていただきます。

MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査

X線を用いず、磁場と電波を用いて身体の断層撮影を行います。検査を受ける方は仰向けで円筒状の装置に入り20-30分かけて撮影を行います。大腸がんの精査で行う場合は腹部や骨盤の評価に用いられることが多く、腫瘍の深さ、リンパ節転移の有無、肝臓への転移の有無をより詳細に評価することが出来ます。

PET-CT検査

がん細胞は増殖スピードが速いため、正常な組織より多くのエネルギー(ブドウ糖)を必要とします。PET-CT検査は検査を受ける方に微量の放射線同位元素で標識されたブドウ糖(FDG)を静脈注射で投与した後、全身の断層撮影を行いFDGの取り込みを評価します。腫瘍や炎症がある箇所ではFDGの集積が認められ、画像所見として認識されます。大腸がんでは主に転移や再発の診断目的にPET-CT検査は用いられます。

治療

内視鏡治療

早期の大腸がんは、内視鏡治療で切除が可能です。

内視鏡治療は、先端に小型カメラとライトが付いた、細長い管状の形をした手術器具を肛門から入れて、大腸の内部をモニター画面で見ながら、手術器具を手元で操作して腫瘍を切り取る治療方法です。内視鏡治療は、体への負担が比較的軽く、入院期間が短く済むなどの利点があります。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

隆起していない、平らな形をした腫瘍に用いられる方法です。大きさが2cm未満の腫瘍に行われます。まず内視鏡の先端から出る注射で、腫瘍の下側に医療用の食塩水などを注入して、腫瘍を浮かせ、盛り上がった状態にします。腫瘍が盛り上がったことでできた、茎に当たる部分に細い金属の輪を掛けて、腫瘍をまわりの粘膜とともに焼き切ります。
この治療法は、入院が必要な場合もあります。

内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)

腫瘍の下側に薬液を注入しながら、腫瘍を電気メスで薄くはぎ取る方法です。ポリペクトミーやEMRでは切り取ることができない大きな腫瘍も一度に切り取ることができます。以前は外科手術を行っていた2㎝以上の病変でも、おなかを切らずに内視鏡で治療できることが多くなりました。この治療法は、数日間の入院が必要となります。

内視鏡治療のメリット・デメリット

メリット

•手術よりも体への負担が少ない

•日帰りで治療を受けられる場合がある

•大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、
切除により痛みを感じることはほとんどない

デメリット

•切除した病変は病理検査を行い、がんの広がりの程度などを確認します。その結果、がんの深さや大きさが内視鏡治療の適応を超えており、リンパ節転移の危険性があることが判明した場合には、後日追加の手術が必要になることがあります

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術では腹部に4、5箇所程度穴をあけます。さらにそこにカメラや鉗子などの手術器具を通し、カメラの画像を見ながら手術を行います。腹腔鏡手術は開腹術と比べて非常に小さな創で済むため手術のダメージを最小限にし、、患者さんの術後の痛みが少ないこととそれにより回復が早いことが一番の長所です。

5か所程の小さな傷からカメラと専用の手術機器をお腹の中に挿入し、テレビモニターを見ながら手術を行います。モニターで術野を拡大するため、繊細な操作が可能であり、細い血管も見えるため少ない出血量で手術を行うことが出来ます。

複数回の開腹歴や癒着がなければ、腹腔鏡手術が検討されます。たとえば、これまでに手術歴があっても手術箇所が腸ではない場合には、基本的に腹腔鏡手術を適応します。

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

メリット

•開腹手術より傷が小さく、体への負担が少ない

•術後の回復が早い

•傷が小さく目立ちにくい

•高齢者でも治療が可能な場合がある

デメリット

開腹手術よりも30~60分程、手術時間が長くかかる

開腹手術

進行大腸がんの場合、開腹手術が選択されます。開腹手術とは、おなかを大きく開けて行う方法です。傷の大きさは病変の大きさや発生部位によりかわりますが、メリットは、執刀医が患部を直接見て、触った感覚を確認しながら治療が進められる点で、患部を広く見渡せるため、出血などがあってもすばやく対応することが可能です。また、見逃されがちですが、使いきりの器具をほとんど使わないため、手術費用が後述の腹腔鏡手術より安くて経済的であることもメリットと言えます。しかし、ある程度の大きさの傷が必要になるため、患者さんへの身体の負担の大きさ、手術後の痛みなどが予想されるデメリットとして指摘されています。

その他

化学療法

放射線治療

免疫療法

ダヴィンチ(ロボット)治療

など

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